軽量で資源量が豊富な元素で構成されているMg₂Siは、自動車に積載できる熱電変換デバイスのための熱電変換材料として期待されています。 熱電変換デバイスには高い熱電性能を示すn型、p型両方の熱電変換材料が必要です。 元素置換や元素添加によって電気伝導キャリアを導入することでMg₂Siの熱電性能の向上が進められてきましたが、n型の熱電性能に比べて、p型のそれが低いことが課題です。

第一原理計算によるとMg₂Siには点欠陥が存在し、右図(上)のように(0.5 0.5 0.5)の格子間サイトにMgが存在することで電子キャリアが導入される可能性が報告されていました。 我々は、格子間サイトのMg(Mg_i)がMg₂Siへのホールキャリアの導入を困難にしているのではないかと考えました。 このことを確認するにはMg_iの存在を実証しなくてはなりません。 Mg₂Siは劈開性があるため単結晶X線回折を用いました。 単結晶X線回折パターン(右図(下))を何枚も撮って結晶構造解析を行ったところ、確かにMg_iが微量存在していることが明らかになりました。

我々はこの知見をもとに元素置換や元素添加によって格子間サイトを制御して、Mg₂Siの熱電性能の向上を試みています。 第一原理計算と単結晶X線回折を用いて、理論的・実験的に格子間サイトを含めたMg₂Siの結晶構造を解析し、熱電性能との関連を調査しています。